園田智代子のチョコっとブログ♪

chiyoko ちょこっと ダイアリー

この気持ちの名前を僕らはまだ知らない

只この景色が──腹の足しにもならぬ、月給の補いにもならぬこの景色が景色としてのみ、世が心を楽ませつつあるから苦労も心配も伴わぬのだろう。自然の力はここに於いてて尊い。吾人の性情を瞬刻にして陶冶し醇乎として醇なる詩境に入らしむるのは自然である。
恋はうつくしかろ、考もうつくしかろ、忠君愛国も結構だろう。然し自身がその局に当れば利害の旋風に捲き込まれて、うつくしき事にも、結構な事にも、目は眩んでしまう。従ってどこに詩があるか自身には解しかねる。
これがわかる為めには、わかるだけの余裕のある第三者の地位に立たねばならぬ。三者の地位に立てばこそ芝居は観て面白い。小説も見て面白い。芝居を見て面白い人も、小説を読んで面白い人も、自己への利害は棚へ上げている。見たり読んだりする間だけは詩人である。

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